ボールト&ロンドン・フィルによるシューマンの≪春≫を聴いて

ボールト&ロンドン・フィルによるシューマンの≪春≫(1956年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
颯爽としていて、かつ、明朗な演奏が繰り広げられています。その演奏ぶりは、この作品に誠に似つかわしい。
それでいて、音楽が軽々に滑ってゆく、ということはない。作品をキッチリと彫琢してゆく。そのような演奏が展開されているのであります。全体的に、弾力性を帯びている。活力が漲っていて、力感も十分。そして、推進力に溢れている。そのような中でも、とりわけ、後半の2つの楽章では、頗る逞しくて、熱の籠った音楽が奏で上げられている。
と言いつつも、過度に暑苦しくなるようなことはない。熱量や運動量は十分でありながらも、颯爽としているのであります。そう、押しつけがましさの全くない音楽が響き渡っている。
なるほど、シューマンならではの「狂気」といったものは薄いと言えましょう。それよりももっと、朗らかな音楽が鳴り響いている。そして、肩肘張った感じは微塵もない、親しみ深い音楽が奏で上げられているのであります。そのうえで、隅々まで充実し切った演奏が繰り広げられている。品格の高さのようなものが巧まずして滲み出ているとも言いたい。もっと言えば、ボールトらしい、音楽への誠実さといったものが滲み出ている演奏となっている。
イギリス音楽のみならず、ドイツ音楽においても素晴らしい演奏を繰り広げることの多かったボールト卿。そんなボールトによる、なんとも素敵なシューマン演奏であります。





