アバド&ロンドン響によるラヴェルの≪ダフニスとクロエ≫全曲を聴いて

アバド&ロンドン響によるラヴェル集から、≪ダフニスとクロエ≫全曲(1988年録音)を聴いてみました。

巧緻にして、克明な演奏が繰り広げられています。更に言えば、鮮烈な音楽が奏で上げられている。淡い色調による音楽というよりも、原色系に近い。そして、とてもダイナミックであり、起伏に富んだ演奏だとも言いたい。
とは言うものの、力づくであったり、粗暴であったり、といった演奏になっている訳ではない。音楽がしなやかに奏で上げられてゆく。適度にふくよかであり、弾力性を帯びてもいる。そう、決して直線的な音楽づくりが為されている訳ではないのであります。そのうえで、生気に富んだ音楽が鳴り響いている。流麗にして、明朗な演奏だとも言いたい。
そんなこんなのうえで、やはり、この演奏を特徴づけているのは、明晰で鋭利な演奏ぶりにあると言いたい。模糊とした雰囲気が漂ってゆくのではなく、輪郭のハッキリとした音楽が鳴り響いている。そのことによって、とても見通しの良い演奏となっている。

「フランス音楽ならではのエスプリ」からは幾分なりとも離れている演奏だと言えそうですが、そのようなことを度外視して考えると、この演奏で味わうことのできる「キッチリ感」は、なかなかに魅力的なもの。そして、仕上げが入念であることもあって、美麗な音楽が鳴り響いている。
アバド色に彩られた、素敵なラヴェル。そんなふうに言いたくなる演奏であります。