マルティノン&シカゴ響によるビゼーの≪アルルの女≫を聴いて

マルティノン&シカゴ響によるビゼーの≪アルルの女≫(1967年録音)を聴いてみました。
克明で、力強い筆致で描かれている演奏であります。曖昧模糊とした雰囲気や、浮遊感のようなものは、極めて薄い。目鼻立ちがクッキリとしていて、リアリスティックな演奏ぶりだと言えましょう。
この辺りの特徴は、1970年代にフランス国立放送管と制作したプロコフィエフの交響曲全集などでも見ることのできるマルティノンの音楽的志向なのでありましょうが、オケがシカゴ響だということが、上記の印象を更に強めているように思えます。ちなみにマルティノンは、1963-69年の6年間、シカゴ響の音楽監督を務めています。それは丁度、ライナーが退任し、ショルティが就任するまでの6年間に当たる訳であります。
かなり逞しいビゼー演奏であると言えましょう。可憐で繊細で、抒情味を湛えている、といった性格からは隔たりがある。その一方で、気風の良さのようなものが備わっていて、毅然とした演奏が繰り広げられている。その点が、大きな魅力となっています。それは、頑健にして痛快なビゼー演奏だとも表現できそう。なお、終曲の「ファランドール」での最後の追い込みでは、凄まじいまでのアッチェレランドが掛けられていて、痛快な印象を更に強めている。
しかも、基本的には直線的な演奏だと言えるのでしょうが、その中からふくよかさが感じられもする。そして、決してケバケバしくはないものの、色彩的で光彩豊かな音楽が奏で上げられている。そのような先から、フランス音楽としての薫りが立ち込めてくるのであります。
ユニークな魅力を持っていて、かつ、聴き応え十分な演奏。マルティノン&シカゴ響というコンビの特質がクッキリと刻まれている演奏だとも言いたい。
そんな、なんとも興味深い演奏であります。そして、とても素敵な演奏であります。





