ズヴェーデン&オランダ放送フィルによるブルックナーの交響曲第5番を聴いて

ズヴェーデン&オランダ放送フィルによるブルックナーの交響曲全集から、第5番(2007年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

スッキリと鳴らされていて、清澄な音楽世界の広がるブルックナー演奏となっています。
概して遅めのテンポが採られていて、細部まで丹念に仕上げられています。その一方で、必要に応じて速めのテンポを採り、音楽を一気に煽ってゆく。その辺りの切り替えが、実に鮮やか。起伏を大きく採りながらの、目鼻立ちのクッキリとした演奏になっているとも言いたい。それでいて、仕上げの丁寧さもあって、流れは頗る滑らかで、しなやか。
更には、全体的に、キリっとした表情を湛えていて、贅肉を削ぎ落としたプロポーションが示されている。見通しが、とても良い。なおかつ、精巧な造りをしている演奏が繰り広げられていると言いたい。そして、ピュアな美しさを湛えた演奏となっている。
そんなこんなもあって、ある種、流麗さの感じられるブルックナー演奏となっています。とは言うものの、ただ単に円滑な流れによって、うわべを整えただけの音楽が奏で上げられている訳ではない。十分に逞しい音楽になっている。マスとしての力が備わっているとも言いたい。そのうえで、大袈裟にならない範囲で壮麗でもある。この作品ならではの、階段状に音楽を積み上げてゆくような趣きにも不足はなく、堅固な音楽が鳴り響いている。そのようなことによって、この作品の音楽世界を存分に味わうことができる演奏となっている。しかも、安心して身を浸すことができる。そういった辺りから、ズヴェーデンの手腕の確かさや、卓越した音楽性といったものが滲み出ていると言えるのではないでしょうか。

ケレン味のない率直な演奏であり、かつ、ズヴェーデンの魅力が詰まっている、素敵なブルックナー演奏であります。