フリッチャイ&RIAS響によるモーツァルトの≪ジュピター≫を聴いて

フリッチャイ&RIAS響によるモーツァルトの≪ジュピター≫(1950年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

キリっとした表情を湛えている演奏となっています。凝縮度の高い音楽が鳴り響いている。
とは言いましても、いかめしい表情をしている訳ではありません。この作品に相応しい、伸びやかさが備わっている。更には、均整の取れた優美さを湛えたものとなってもいる。そして、なんとも高潔であり、凛としている。
そのうえで、彫琢が深くて、目鼻立ちのクッキリとした演奏ぶりとなっています。フリッチャイならではの、集中度の高さが感じられる。毅然としてもいる。
そんなこんなは、セルによるモーツァルト演奏に似ているとも言えそう。
しかも、決して速いテンポが採られている訳ではないものの、音楽の内部に宿している活力は十分。それ故に、溌剌としていて、生命力に溢れていている音楽が鳴り響くこととなっています。そのような音楽づくりがまた、この作品には誠に似つかわしい。過剰にはしゃぎ回るようなことはしていないながらも、理性的な愉悦感、といったようなものを湛えている。純度の高い演奏ぶりであり、晴朗な音楽世界が広がることとなってもいる。

フリッチャイの美質がクッキリと刻まれていて、なおかつ、この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏。
聴き応え十分な、そして、味わい深さを湛えている、なんとも素敵な演奏であります。