ギトリス&ホーレンシュタイン&ウィーン響によるブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番を聴いて

ギトリス&ホーレンシュタイン&ウィーン響によるブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(1956年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ギトリスならではの、奔放で力強い演奏が繰り広げられています。激情的であり、情念の濃さのようなものが感じられもする。
更には、頗る情熱的でもあります。火花が散るような演奏ぶりで、気魄が籠っている。そのため、演奏に鬼気迫る表情が加わっているとも言いたい。とりわけ、最終楽章では、速めのテンポでグイグイと押してゆく演奏が展開されていて、頗る煽情的な音楽となっている。
更には、全編を通じて、妖艶な表情を湛えています。ロマン派の音楽に特有な、耽美的な雰囲気も十分。
そのうえで、歌うべきところは連綿としたカンタービレを効かせてくれています。そう、実に表情の幅が広い。
そして、テクニックにはキレがある。快刀乱麻たる演奏ぶりだとも言えそう。
これはもう、「鬼才」と呼ばれることの多かったギトリスの面目躍如たる快演だと言いたい。
そのようなギトリスに対して、ホーレンシュタインも、十分に熱気を孕んだ音楽づくりが施されていつつ、目鼻立ちがクッキリとしていて、端麗な演奏を繰り広げてくれている。そのような音楽づくりが、ギトリスの演奏を引き立ててくれていると思われます。ギトリスは、ホーレンシュタインの指揮を高く買っていたようですが、そのことがよく理解できる。

ギトリスの至芸を堪能することのできる、素晴らしい演奏であります。