プレヴィン&ロンドン響によるプロコフィエフの≪ピーターと狼≫とブリテンの≪青少年のための管弦楽入門≫を聴いて

プレヴィン&ロンドン響によるプロコフィエフの≪ピーターと狼≫とブリテンの≪青少年のための管弦楽入門≫(1973年録音)を聴いてみました。

主として子供たちのために創作された2つの作品を収めた音盤。
前者のナレーションは、当時のプレヴィン夫人であった女優のミア・ファーローが務めています。後者のナレーションは、プレヴィン自身によるもの。

両曲ともに、聴いていてワクワクする演奏となっています。音楽の描写が克明で、語り口の巧みな演奏でもある。そのために、明快で、解りやすい演奏になっているとも言いたい。
総じて、息遣いが豊かで、かつ、音楽の流れが自然で伸びやか。そして、親しみ深くて、暖かみを帯びた音楽が奏で上げられています。瀟洒で、洗練味を帯びてもいる。メロウな雰囲気の漂う演奏だとも言えそう。そのうえで、尖鋭な表現は全く見受けられないものの、生彩感に満ちている。
特に、≪ピーター≫での演奏ぶりは、実に生き生きとしたものとなっています。大袈裟でない範囲で、充分に劇的でもある。そこに、ファーローによる臨場感溢れるナレーションが加わることによって、面白味が倍加。とりわけ、狼を生け捕りにする場面では、演奏もナレーションも、嵩に懸けての緊迫感があり、大きなクライマックスを築いてくれていて、聴き応え十分なものとなっている。
一方の≪管弦楽入門≫は、物語性を持っている作品ではないため、劇的な効果を狙った演奏が繰り広げられている訳ではありません。≪ピーター≫での演奏以上にメロウな雰囲気が感じられる。とは言いましても、適度に雄大な演奏が繰り広げられている。そのうえで、スッキリと纏っていて、丹念で巧緻な演奏となっている。最後のフーガの部分などは、疾駆感の強い演奏となってもいる。

肩の力を抜きながら、音楽を聴く楽しみを味わうことのできる、素敵な作品であり、素敵な演奏。そんなふうに言いたくなる、魅力的な音盤であります。