クレンペラー&フィルハーモニア管によるベートーヴェンの≪英雄≫(1960年 ウィーン芸術週間でのライヴ)を聴いて

クレンペラー&フィルハーモニア管による、1960年のウィーン芸術週間で開かれたベートーヴェン交響曲全曲チクルスを収めているCDから、≪英雄≫(1960/5/29ライヴ)を聴いてみました。

剛健な演奏であります。そして、実に立派。
なるほど、聴いていて襟を正したくなるような、威厳に満ちた演奏が展開されています。それでいて、堅苦しくない。音楽の息遣いがとても自然なのであります。
何と言いましょうか、とてもフォーマルな演奏だと言えるように思えます。言い方を変えれば、王道を行くような演奏ぶりが示されている。
スケールがとても大きい。テンポは遅からず速からず(古楽器による颯爽とした演奏を知った現代の聴き手の耳からすれば、遅めではあります)といったところなのですが、悠揚たる音楽世界が広がっています。それでいて、重くなるようなことはない。生気に満ちていて、覇気のある音楽が鳴り響いている。そして、大きなエネルギーを感じさせてくれる演奏にもなっている。そう、とても逞しい演奏なのであります。壮麗で、輝かしくもある。
しかも、凝縮度の高い演奏となっています。媚びを売るようなところは皆無で、決然とした表情をしている。
そのうえで、飛翔感の大きな演奏となっている。内に内にと活力を貯め込むような演奏ぶりではなく、健やかな形でエネルギーが発散されているのであります。この点は、ライヴだということが大きいのではないでしょうか。

雄渾にして壮健な演奏。そのような演奏ぶりがまた、この作品の音楽世界に誠に相応しい。
なんとも見事な、そして、聴き手を惹きつける力の大きな、素晴らしい演奏であります。