オーマンディ&フィラデルフィア管によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(RCA盤・1973年録音)を聴いて

オーマンディ&フィラデルフィア管によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1973年録音)を聴いてみました。

いやはや、なんとも素敵な演奏であります。
確かに華麗な演奏だと言えましょうが、必要以上に派手な音楽にはなっていません。響きもケバケバしいものになっている訳ではない。とてもメロウな響きがしている。
しかも、大仰な演奏ぶりにはなっていなくて、手触りはソフトで滑らかなもの。強引さが微塵もなく、ゆとりをもって音楽が奏で上げられている。
とは言いましても、十分にドラマティック。とりわけ、「ババヤーガ」から「キエフの大門」にかけては、頗る起伏に富んだ演奏が展開されている。最後の部分での昂揚感も見事。そのような点も含めて、全編を通じて、押しつけがましさのない劇的な力強さや、壮麗さを持った音楽が鳴り響いています。そのうえで、絢爛豪華な音楽となっている。その加減は、まさに過不足のないものだと言いたい。
それにしましても、ここでのフィラデルフィア管の魅力は、いかばかりでありましょうか。個々の奏者が聞かせてくれているソロの妙技と、オケ全体のブレンドされた芳醇な響きの美しさたるや、ただただ惚れ惚れするだけであります。しかも、ラヴェル編曲による当曲に相応しい色彩感を備えてもいる。

オケを聴く歓びと、この作品に接する歓びとを、心行くまで味わうことのできる、素晴らしい演奏。それと同時に、オーマンディ&フィラデルフィア管のコンビの美質が最大限に発揮されている、見事な演奏だと言えるのではないでしょうか。