クレメンス・クラウス&バンベルク響によるシューベルトの≪未完成≫を聴いて

クレメンス・クラウス&バンベルク響によるシューベルトの≪未完成≫(1951年録音)を聴いてみました。

スッキリとしていつつ、格調の高い演奏が繰り広げられています。凛とした表情を湛えてもいる。
やや速めのテンポで進められてゆく。決して重々しくはなく、デモーニッシュな音楽として鳴り響いている訳でもないのですが、サラサラと音楽が流れてゆくようなことはない。そのうえで、必要以上に抒情性が強調されるようなことがなく、ズシリとした手応えを感じさせてくれる演奏になっています。芯の強さのようなものが感じられもする。
ウィーン的な薫り高さが立ち込めるような演奏というよりも、どちらかと言えば武骨な雰囲気が漂っています。色調もくすんだ感じ。この辺りは、1950年代初頭のバンベルク響の体質に依るところが大きいのでしょうか。
しかしながら、その先に、一種独特な洗練味が感じられます。キリっとした表情を湛えてもいる。そして、実に美しい佇まいを示している。しかも、とてもピュアな形で。

清廉であり、かつ、コクの深さが感じられる演奏となっている。あからさまに麗しい姿をしている訳ではないのに、エレガントな美しさが感じられもする。その佇まいは、とても独特なものだと言えましょう。
このような演奏、私は大好きであります。