ヨーヨー・マ&アンドリス・ネルソンス&ボストン響によるショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1,2番を聴いて

ヨーヨー・マ&アンドリス・ネルソンス&ボストン響によるショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1,2番(2023年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ショスタコーヴィチでの演奏としては、スッキリと纏められていて、清澄な音楽が奏で上げられています。音楽が粘るようなこともない。洗練味の感じられる演奏となっている。
更に言えば、過度に苛烈であったり、しかめつらしかったり、といった演奏となっている訳でもありません。ショスタコーヴィチならではの(特に、第1番において顕著に備わっていると言えそうな)辛辣さが、あまり尖った形で示されていない。或いは、第2番の第2楽章で象徴的に表されているような「滑稽味」も、過度に強調されていない。
それでいて、必要十分にシリアスな音楽が響き渡っている。何と言いましょうか、作品の内奥を抉り出すような、真実味を追求するようなアプローチが施されている。それゆえに、彫琢の深い演奏となってもいる。
そのようなこともあり、とても実直な演奏が繰り広げられています。ここでの演奏には、誇張は一切に感じられない。もっと言えば、背骨のシッカリとした演奏だとも思える。
そのような音楽が奏で上げられてゆく中で、ヨーヨー・マによるチェロは、とても滑らかものとなっている。この演奏が、あまり深刻なものとなっていないのは、ヨーヨー・マによる演奏ぶりの明朗さに依るところが大きいのではないでしょうか。そのうえで、豊潤なチェロ独奏が繰り広げられている。
そんなヨーヨー・マを、ネルソンスは、頗る篤実な音楽づくりによってバックアップをしてくれています。更には、ボストン響の響きにはケバケバしさが一切なく、奥床しさが感じられると言いましょうか、なんとも落ち着いた色調をしていて、とても芳醇なものとなっているのが、この演奏をより一層魅力的なものにしてくれている。

ピュアな美しさを湛えていて、なおかつ、しっかとした手応えを備えている演奏。ダンディズムのようなものが感じられるショスタコーヴィチ演奏だとも言いたくなる。
他からは得難い魅力を備えている、素晴らしい演奏であります。