ジュリーニ&シカゴ響によるドヴォルザークの交響曲第8番を聴いて
ジュリーニ&シカゴ響によるドヴォルザークの交響曲第8番(1978年録音)を聴いてみました。
遅めのテンポで、どっしりと構えた音楽づくりの為されている演奏であります。それだけに、弾き飛ばすようなところは皆無で、充実感タップリな音楽が鳴り響いている。
とりわけ、最終楽章での主部では、音楽が階段状に積み上がってゆくような様相を呈していて、なんとも宏壮な音楽が響き渡っている。
と言いつつも、決して重苦しい演奏になっている訳ではありません。必要十分に輝かしい演奏が繰り広げられている。例えば、第2楽章などでは、壮麗で、かつ、雄大な音楽が奏で上げられている。更には、歌心に満ちてもいる。特に、第3楽章のトリオ部では、感傷的な色合いを湛えながらも広大な地平線が広がってゆくような、タップリとした歌が披露されていて、頗る印象的。
更に言えば、様々な声部がクッキリと浮かび上がってくるような、克明な演奏となっています。そのうえで、凝縮度の高い演奏となっている。謹厳さのようなものが感じられもする。こういった辺りは、シカゴ響の巧緻なアンサンブルと引き締まった響きが、その印象を一層強めてくれているように思えます。しかも、シカゴ響の反応は頗る鋭敏で、技巧面でも響きの面においても、雑味のない純粋な音楽として「現実の音」に置き換えてくれていると言いたい。
克明でありつつ歌謡性に溢れていて、なおかつ、内に向かって収縮してゆくエネルギーとともに、外に発散されるエネルギーも適度に持っている演奏。そのようなことが相まって、とても懐の深い演奏だと言えそう。
ズシリとした手応えを持った、そして、多面的な魅力を持った、素晴らしい演奏であります。