クーベリック&バイエルン放送響によるベートーヴェンの交響曲第7番(1970年 DGセッション録音)を聴いて

クーベリック&バイエルン放送響によるベートーヴェンの交響曲第7番(1970年録音)を聴いてみました。
クーベリックは、1970年代に9つの異なるオーケストラを振り分けながらベートーヴェンの交響曲全集を制作していますが、当盤はそこに収められていたものとは別のもの。ちなみに全集での第7番は、ウィーン・フィルを起用して、当盤の4年後となる1974年に録音されています。
なお、手持ちのCDは、音楽之友社のレコード芸術誌が企画した「名盤コレクション・蘇る巨匠たち」のシリーズで再発売されたものになります。

さて、ここでの演奏はと言いますと、クーベリックらしい質実なものとなっています。そのうえで、構成感の高さが備わってもいる。
テンポは、やや遅め。ジックリとした足取りで進められています。と言いましても、音楽がダレるようなことは皆無。シッカリとした推進力を宿していて、逞しく前進してゆく。そのようなこともありまして、この作品が有しているエネルギーが的確に放出されているのですが、音楽が開放的になるようなことはなく、頗る凝縮度が高い。全編を通じて、毅然とした表情が窺えもする。しかも、決してケバケバしくはないものの、十分な輝かしさが備わっている。そして、極めて充実度の高い音楽が響き渡っている。
最終楽章も、慌てず騒がず、着実に進められています。テンポは決して速くないが、さりとて遅いというほどでもない。そのような歩みを採りながら、十分に馬力のある音楽が鳴り響いている。そして、必要十分に壮麗でもある。それは、この楽章が備えている性格を、虚飾の無い形で描き上げたものだと言いたい。
その一方で、第2楽章では、哀切な歌が心に沁みてくる演奏となっている。それでいて、媚びを売るようなところが全くないのが、クーベリックらしい。

聴き手を煽るようなことは微塵もありません。それでも、「音楽を聴く熱狂」を十分に味わうことのできる演奏になっていると言いたい。それは、「底光りするような熱狂」とでも表現すれば良いでしょうか。更に言えば、ピュアな美しさを湛えた演奏となっている。
そのような演奏ぶりを通じて、この作品の魅力が存分に味わうことのできる当盤。聴後の満足度が頗る高くもある。
なんとも見事な、そして、懐の深さを感じさせてもくれる、素晴らしい演奏であります。