カンテルリ&フィルハーモニア管によるモーツァルトの≪音楽の冗談≫と交響曲第29番を聴いて
カンテルリ&フィルハーモニア管によるモーツァルトの≪音楽の冗談≫と交響曲第29番(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
なんとも爽やかな演奏が繰り広げられています。躍動感に満ちていて、生彩感に富んでいて、かつ、覇気が漲っている。歌心に溢れている。そのうえで、キリリとした表情を湛えてもいる。
そんなこんなによって、格調高くて、流麗で、かつ、晴れやかな音楽が鳴り響くこととなっています。それはあたかも、辺り一面に青空が広がっていて、清涼感に満ちた、心地よい風が吹き渡っているかのよう。
屈託がなくて、率直な音楽が奏で上げられている。それゆえに、モーツァルトならではの、伸びやかで、なおかつ、飛翔感に満ちた音楽世界が広がってゆく。愉悦感に溢れてもいる。そして、明朗快活な音楽が響き渡っている。
≪音楽の冗談≫では、悪ふざけするようなところは微塵もなく、凛とした演奏ぶりが示されていつつも、微笑みを湛えながらの、ウィットに富んだ演奏が繰り広げられている。また、交響曲第29番では、颯爽とした音楽づくりがより一層際立っている。
モーツァルトに触れる歓びを、ひいては、音楽を聴く幸せを、存分に味わうことのできる演奏。
カンテルリは、この録音の翌年の1956年に、36歳の若さで飛行機事故によって夭折してしまいます。そのことを悔やんでも悔やみきれませんが、このようにも素敵なモーツァルト演奏の録音を遺してくれていることに、感謝せずにはおれません。しかも、カンテルリの美質を最大限に生かすことができると言えそうな、交響曲第29番と≪音楽の冗談≫の2曲を選曲してくれているところが、なんとも有難い。
カンテルリの素晴らしさを痛感することのできる、なんとも魅力的な1枚であります。