ドホナーニ&クリーヴランド管によるバルトークの≪弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽≫を聴いて

ドホナーニ&クリーヴランド管によるバルトークの≪弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽≫(1992年録音)を聴いてみました。

このコンビならではの、明晰にして生気に溢れた演奏が繰り広げられています。
この作品は、厳粛さを持っている音楽だと言えるように思います。更に言えば、魑魅魍魎とした音楽でもあると言えるのではないでしょうか。しかしながら、ここでの演奏は、そのような性格は薄い。もっと、克明な音楽が鳴り響いているように思えるのであります。或いは、明朗で、健康的な演奏であるとも言えそう。
それでいて、キリっと引き締まった演奏となっているところが、このコンビらしいところと言えましょう。雑味がなくて、結晶度の高い音楽が鳴り響いている。
そのうえで、十分にヴィヴィッドな演奏となっている。音楽が目の前から飛び出てきそうなほどに鮮やかで、実在感に溢れていて、躍動感が漲ってもいる。
しかも、仕上げが巧緻であり、目鼻立ちがクッキリとしています。なんとも端正であり、精巧な音楽が鳴り響いている。
私は常々、バルトークの音楽には「血湧き肉躍る熱狂」のようなものが宿っていると考えているのですが、そのような性格にも不足はありません。しかも、過度に凶暴になるようなことはない。整然とした音楽世界の中で、「血湧き肉躍る熱狂」が滲み出てくるような演奏となっている。

このコンビの魅力をタップリと味わうことのできる、素晴らしいバルトーク演奏。そんなふうに言えましょう。