小澤さん&ボストン響によるベルリオーズの劇的交響曲≪ロメオとジュリエット≫を聴いて

小澤さん&ボストン響によるベルリオーズの劇的交響曲≪ロメオとジュリエット≫(1975年録音)を聴いてみました。
YouTubeに収蔵されている音源での鑑賞になります。

録音当時40歳であった小澤さんが奏で上げているここでの演奏は、精彩感があって、推進力があって、情熱的で、劇的なもの。そう、この作品に付けられている「劇的交響曲」という表記が、誠に似つかわしい演奏だと言いたくなります。
なるほど、折り目正しくて、抒情性が豊かで、といった小澤さんの美質が充分に現れています。そのうえで、小澤さんの演奏にしばしば感じられる、「優等生的」で「安全運転」な音楽づくりといったものは、この演奏では見受けられない。頗るアグレッシブで、煽情的で、一種の「狂気」のようなものが秘められた演奏が展開されている。
とても鮮烈な演奏。音楽が、あちこちで渦巻いている。音楽が、嬉々として弾んでもいる。
そのようなこともあって、端正な佇まいをしていつつ、スリリングな演奏となっています。大きな起伏が採られている。音楽が生き生きとした表情を見せてくれている。息遣いが豊かでもある。しかも、音楽の流れは頗る自然。そう、ダイナミックでありつつも、決して大袈裟な表現が採られている訳ではない中で、生気に満ちた音楽が奏で上げられている。更に言えば、ロマンティックで、ファンタスティックでもある。
そのうえで、小澤さんならではの「音楽に対する誠実さ」が演奏の端々から滲み出ている。

小澤さんの魅力がフルに発揮されていると言いたくなる演奏。
なんとも見事な、そして、素敵な演奏であります。

※ジャケット写真は、ユニバーサル・ミュージック・ジャパン社のサイトから拝借させて頂きました。