グリュミオー&ハスキルによるモーツァルトのヴァイオリンソナタを聴いて
グリュミオー&ハスキルによるモーツァルトのヴァイオリンソナタ第34,28,32,25番(1958年録音)を聴いてみました。
このコンビによるモーツァルトのヴァイオリンソナタは、発売当初から「決定盤」との評判を呼んだようです。今でも代表盤の一角を占め続けていると言えましょう。
長くの間、多くの音楽愛好家に愛され続けている音盤。
さて、久しぶりに聴き直しての印象についてであります。
なんとも優美な演奏であります。
甘くて、かつ、凛としている。そう、暖かくて、親しげでありつつ、背筋がピンと伸びているような凛々しさがある。そのうえで、気高さが感じられる。
これらの印象は、グリュミオーの演奏ぶりもさることながら、ハスキルのピアノに依るところが大きいように思えます。それは、「ヴァイオリンの助奏付のピアノソナタ」と呼ばれていた、この当時のヴァイオリンソナタの形態にも依るのでしょう。と言はいえ、その点を差し置いても、ハスキルによるピアノがこの演奏を大きく特徴づけしているように思えます。ここでのハスキルによるピアノは、珠のように美しい。そして、気品に満ちている。
長調の作品の急速楽章では、軽やかなタッチで、優美に転がっていくように音楽を奏でているハスキル。短調作品では、曲想に相応しい決然とした雰囲気を漂わせつつも、音楽が必要以上に深刻にならずに、典雅な佇まいが保たれている。
そのようなハスキルのピアノに乗っかって、甘美に、そして、伸びやかで端正に音楽を紡ぎ上げてゆくグリュミオー。必要に応じては、適度にドラマティックな演奏ぶりが示されたりもする。
夢見心地に誘われるような、素敵な素敵な演奏であります。