スメタナ弦楽四重奏団とヤナーチェク弦楽四重奏団によるメンデルスゾーンの八重奏曲を聴いて

スメタナ弦楽四重奏団とヤナーチェク弦楽四重奏団によるメンデルスゾーンの八重奏曲(1968年録音)を聴いてみました。
チェコが誇る2つの名カルテットによる共演。その演奏はと言いますと、緊密度が高く、かつ、燃焼度の高いものとなっています。
それにしましても、なんとスリリングな演奏なのでありましょう。共演というよりも、競演と言ったほうが相応しいような演奏ぶり。そう、バチバチと火花を散らしながらの演奏、といった感じになっている。
それでいて、両者が喧嘩をしている訳ではありません。粗い演奏にはなっている訳でもありません。むしろ、緻密な演奏が展開されている。凝縮度が頗る高くもある。そのうえで、熱い血潮を燃え滾らせた、昂揚感の高い演奏となっている。音楽がうねりにうねっている。
メンデルスゾーンは、穏便で優美な音楽世界を描いてゆく作曲家、といったイメージが強いように思えますが、16歳の時に書き上げたこの作品には、そ
こここに情熱の迸りが感じられます。至る所にCon fuoco(火のように熱く)という指示が書き記されていることが、そのことを如実に裏付けている。そのような性格を、クッキリと描き上げてくれている演奏。そんなふうに言えるように思えます。

しかも、メンデルスゾーンの音楽に特有のロマンティシズムにも全く不足が無い。表情豊かでもある。そう、饒舌に過ぎることのない範囲で、濃厚な味わいを持った演奏となっている。その辺りのバランスに、とても優れている。

このチャーミングな作品の魅力を、思う存分に味わうことのできる演奏。聴いていて胸が高鳴ってくる。
いやはや、なんとも見事な演奏であります。