ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルによるチャイコフスキーの≪ロメオとジュリエット≫と≪フランチェスカ・ダ・リミニ≫を聴いて

ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルによるチャイコフスキーのロメオとジュリエットフランチェスカ・ダ・リミニ1977年録音)を聴いてみました。

ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルのコンビは、1976年に≪マンフレッド≫も含む全7曲のチャイコフスキー交響曲全集を制作しており、当盤は、その続編とも看做せそうな録音となっています。
さて、ここでの演奏はと言いますと、生彩感に富んでいて、逞しい生命力の漲っているものとなっています。
ドラマティックで、エネルギッシュ。更には、ロマンティック。そう、頗る濃厚な味付けの為されている演奏が展開されている。更に言えば、音楽がうねりにうねっている。そして、激情的でもある。それは特に、フランチェスカ・ダ・リミニにおいて顕著だと言えましょう。それはもう、壮絶な演奏となっている。
それでいて、これらの作品が持っている「仄暗さ」のようなものも、シッカリと表されています。しかも、センチメンタルな情感にも不足はなく、抒情的な場面では、濃密に、かつ繊細に、旋律を歌い抜いてくれています。であるが故に、単にスリリングな演奏となっている訳ではなく、奥行き感のある演奏となっている。やや遅めのテンポが採られていることもあって、音楽を煽るだけではなく、どっしりと構えた安定感のようなものが感じられもする。

ロストロポーヴィチの豊かな音楽性と、音楽への逞しい情熱とが、クッキリと刻印されている演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
そのうえで、両曲の魅力をタップリと味わうことのできる、頗る魅力的な演奏となっています。