ギーレン&南西ドイツ放送響によるシェーンベルクの≪浄夜≫を聴いて
ギーレン&南西ドイツ放送響によるシェーンベルクの≪浄夜≫(2008年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
近現代の作曲家を得意としていたギーレン(1927-2019)でありますので、シェーンベルクなどはうってつけのレパートリーだと思え、聴く前から期待に胸が膨らみます。
長命だったギーレンが80歳を超えた晩年期に録音したこの≪浄夜≫を聴いてみましても、そのような思いを裏切らない、素晴らしい演奏が繰り広げられていました。
ここでの演奏はと言いますと、ギーレンならではの、シャープで玲瓏たるものとなっています。
輪郭線は明瞭。脂肪分の少ない、キリっと引き締まったフォルムをしている。冴え冴えとしていて、研ぎ澄まされた感性に裏打ちされた演奏だとも言いたい。そんなこんなによって、この作品に相応しい、ピリッとした空気感の漂っている音楽が鳴り響いている。
そのうえで、曖昧さが無くて、とても見通しの良い演奏となっている。そう、なんとも明晰な演奏が展開されているのであります。端正であり、かつ、毅然としている。そして、透明度がとても高くもある。
それでいて、単にスッキリとしているだけでなく、逞しい生命力にも不足はない。音楽が存分にうねっています。また、後半部分での恍惚感も充分。
ギーレンの美質に存分に触れながら、≪浄夜≫の魅力をタップリと味わうことのできる演奏。
なんとも素敵な演奏であります。