クリュイタンスによるビゼーの交響曲を聴いて

クリュイタンス&フランス国立放送管によるビゼーの交響曲(1953年録音)を聴いてみました。

クリュイタンスは、同曲をステレオでは録音しておらず、当盤が唯一のセッション録音となります。と言いつつも、ここで聴くことのできる素晴らしい演奏を味わうには充分な音質。むしろ、モノラルとは言え、クリュイタンスがこの佳曲の録音を遺してくれていることに、ただただ感謝するばかりであります。

さて、ここでの演奏でありますが、クリュイタンスらしいエレガントな音楽世界が広がっています。匂い立つような気品が感じられる。
しかも、溌剌としていて、伸びやかで、歌心に溢れている。暖かみを帯びてもいる。この作品に不可欠な、軽妙さ、無垢な清らかさ、そして、爽快感が横溢している。そのうえで、第2楽章では、哀愁に包まれた音楽となっている。それも、決して哀しすぎることのないものとして。
そしてなによりも、全編を通じて、お洒落な感覚に満ち溢れていることに、惚れ惚れしてしまう。

聴いている間じゅう、「あぁ、なんと素晴らしい曲なのだろう」と感嘆を漏らし通しでありました。
聴く者を幸福感で包み込んでくれる、なんとも素敵な演奏であります。