ベーム&ベルリン・フィルによるベートーヴェンの≪英雄≫を聴いて
ベーム&ベルリン・フィルによるベートーヴェンの≪英雄≫(1961年録音)を聴いてみました。
なんとも凝縮度の高い演奏となっています。そのうえで、毅然としていて、剛毅。質実剛健で、謹厳実直な演奏ぶりだと言えそう。
それでいて、壮麗でもあって、充実感タップリ。覇気の漲った演奏が展開されている。音楽からは、「分厚さ」が感じ取れもします。そして、逞しさに満ちている。壮健さを備えてもいる。
そんなこんなの演奏ぶりが、この作品には誠に似つかわしい。それは、67歳という、指揮者としてまさに壮年期を迎えていると言えそうなベームと、ベルリン・フィルとの組合せならではのものだと見なすことができるのではないでしょうか。
全編を通じて、虚飾の全くない演奏が繰り広げられています。ただただひたすらに、この作品のありのままの姿を映し出してゆこうという意志の強さを感じ取ることができる。骨格がシッカリとしていて、音楽づくりが誠に堅固でもある。その結果として、作品が持っているエネルギーが、過不足なく放出されたものとなっている。華美な表現は一切無く、むしろ無骨とも言える音楽づくりがなされているのですが、そのことによって現れた音楽は、実に端正な「美」を備えたものとなっている。底光りするような輝きが感じられもする。
安心して、この作品の音楽世界に身を浸すことのできる演奏。そして、聴後の充実感の頗る高い演奏。
なんとも立派で、惚れ惚れするほどに素晴らしいエロイカであります。