クリュイタンス&ベルリン・フィルによるシューマンの≪ライン≫を聴いて
クリュイタンス&ベルリン・フィルによるシューマンの≪ライン≫(1957年録音)を聴いてみました。
クリュイタンスの演奏の美質、それは薫り高さにあると思われますが、そのことは、ここでの≪ライン≫においても充分に現れています。そう、クリュイタンスが指揮をすると、フランス音楽に限らず、ドイツ音楽でも、はたまたロシア音楽でも、薫り立つような音楽が鳴り響くことになる。
この≪ライン≫もまた、実にエレガントな演奏となっています。優美にして、艶やかな音楽が響き渡っている。そして、人間味に溢れた暖かさが感じられる。
それでいて、非ドイツ的な演奏になっている訳ではありません。足腰のシッカリとした演奏が展開されている。ガッチリとした構成感が築かれてもいる。と言いつつも、決して重苦しくはない。全体的に瀟洒な雰囲気が漂っている。この辺りは、同じくベルリン・フィルを指揮して録音したベートーヴェンの交響曲と共通した特徴が示されていると言えましょう。
そのうえで、格調の高い音楽が鳴り響いている。ふくよかでありつつも、凛々しくもある。
クリュイタンスによるシューマン、話題になることは少ないように思えますが、なんとも素晴らしい、そして、魅力的な演奏となっています。
多くの音楽愛好家に接してもらいたい1枚であります。