マイケル・ティルソン=トーマス&サンフランシスコ響によるドビュッシーの≪映像≫を聴いて

マイケル・ティルソン=トーマス(MTT)&サンフランシスコ響によるドビュッシーの≪映像≫(2014年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

清々しさに満ちた演奏であります。
過剰な演出は一切感じられず、ケレン味がなくて端正な演奏が繰り広げられています。それでいて、大人し過ぎるといったことはない。実に生き生きとしている。精彩感豊かな演奏となっています。
音楽が豊かに息づいていて、かつ、流れが滑らかでもある。
しかも、切れ味が鋭いといった演奏ではないものの、輪郭はクッキリとしている。そう、明晰な音楽が鳴り響いている。鮮やかさが感じられもする。「イベリア」は、躍動感に満ちている。
更に言えば、色彩感にも不足はない。光沢があって、艶やかでもある。と言いましても、決してケバケバとしたものではありません。底光りするような輝き、といったものが放たれている。そして、暖かみを帯びてもいる。

MTTは、誠実さに溢れた演奏家だと考えていますが、そのような人間性がハッキリと刻まれている演奏だと言えましょう。そのうえで、豊かな音楽性が感じられもする。
聴き応え十分な、そして、MTTの美質が十全に窺える、素敵な演奏であります。