ハーディング&バイエルン放送響(BRSO)によるホルストの≪惑星≫を聴いて

ハーディング&バイエルン放送響(BRSO)によるホルストの≪惑星≫(2022年録音)を聴いてみました。
今年の4月に発売されたばかりの最新盤。NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

1975年に英国に生まれ、今年48歳になるハーディングですが、≪惑星≫の全曲録音はこれまでありませんでした(「木星」のみ、2021年のウィーン・フィルとのシェーンブルン宮殿での夏の夜のコンサートに於けるライヴ録音が音盤化されています)。また、BRSOにとっても、初の同曲の音盤となることでしょう。

さて、ここでの演奏はと言いますと、腰をじっくりと据えたものとなっています。演奏時間は約57分と、同曲としては異例の長さ。スケールの大きさと、コクの深さとを兼ね備えている演奏となっている。しかも、推進力の強さや、逞しいまでの生命力にも不足はない。
そのうえで、ここでの≪惑星≫は、スペクタクルでスリリングな演奏ぶりとは一線を画したものだと言えそう。気宇壮大な演奏ぶりであり、勇壮でもあるのですが、虚栄を張ったものとはなっていない。音楽を丹念に奏で上げ、作品が持っている生命力を正確に放出しよう、といった意志が伝わってくる演奏となっている。
しかも、頗る精妙な演奏ぶりが示されている。そして、この曲としては珍しいと言えようが、まろやかさのようなものも感じられる。そう、充分に力強くありつつも、芳醇な味わいを備えた≪惑星≫となっている。純音楽的な美しさを湛えてもいる。

そのようなハーディングの音楽づくりを、BRSOによる巧緻な演奏がしっかりと支えている。BRSOは、放送局に所属する多くのオーケストラに共通する性質して、機能性の高さと、ニュートラルな響きとを備えた楽団であると看做しているのですが、ここでのBRSOの響きには芳醇なコクが感じられる。分厚過ぎることにならない範囲で、厚みを備えている。響きに、ふくよかさやまろやかさが感じられもする。そして、合奏は誠に緻密である。
いやはや、なんとも見事なオーケストラ演奏であります。

≪惑星≫には魅力的な音盤がひしめき合っていますが、ここにまた、新たな強力盤が登場したことを歓迎したいと思います。しかも、これまでの多くの≪惑星≫とは、随分と趣きを異にした魅力を備えている音盤の登場となった。
この≪惑星≫、お薦めです。