マズア&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管によるブラームスの≪ハンガリー舞曲集≫を聴いてみました

マズア&ゲヴァントハウス管によるブラームスの≪ハンガリー舞曲≫全21曲(1981年録音)を聴いてみました。

篤実でありつつ、思いのほか煌びやかで色彩的な演奏となっています。古色蒼然とした色合いをしているというよりも、健やかでモダンな響きがしている。野暮ったさが全く感じられない。むしろ、十二分に弾けていて、流麗で、推進力に満ちています。瑞々しい息遣いに溢れている。オーケストラも機能的で、機敏でもある。技術的な完成度も高く、ディテールの磨き上げも見事。
しかも、奇を衒ったところは微塵も感じられない。情趣深く、かつ、歓びに満ち溢れています。そう、充実感たっぷりで、生命力豊かに「再現」されてゆくことによって、作品自身も嬉々としているように思えるのであります。
そのうえで、この舞曲集に並んでいる愛らしい音楽に対して、誠実な音楽づくりをベースにしながら、華やかな装いを加えてゆく。曲想に応じて、憂いに満ちた表情が添えられてもゆく。そんなこんなのバランス感覚は、絶妙だと言えましょう。
ところで、ここでの「華やかな装い」は、必要以上に華美なものとなっているのではなく、典雅で落ち着いた華やかさだと言えそうなもの。薫り立つような麗しさが感じられもします。そして、佇まいが誠に端麗でもある。
各ナンバーでの性格付けも鮮やかであります。あるナンバーでは、リズミカルに弾み、上機嫌な表情を見せる。あるナンバーでは、メランコリックな表情を湛えている。あるナンバーでは、陽光が燦燦と降り注いでいるかのように晴れやかである。そんなこんなによって、目の眩むような音楽世界が広がってゆくのであります。と言いつつも、それらは、決して大袈裟に描かれてゆくのではなく、地に足を付けた形で、質実な演奏ぶりの中で示されてゆく。
そこにもってきて、LGOが何とも魅力的。重心が低く、かつ、しっとりとしていながら適度に艶やかな響きが、聴き手を包み込んでゆく。

この舞曲集の魅力を、等身大の形で思う存分に楽しむことのできる、素晴らしい演奏であります。