ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲第5番を聴いて
ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルによるチャイコフスキーの交響曲全集から第5番(1976年録音)を聴いてみました。
≪マンフレッド≫も含む全7曲を収めたこの全集は、1976年10月6日~26日にかけて、僅か3週間で録音されたものになります。この時期、ロストロポーヴィチ&ロンドン・フィルは、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァルホールで4夜にわたるチャイコフスキー・チクルスを開いており、それと並行してセッション録音されたもののようです。
ところで、チャイコフスキーの交響曲全集は、これまでに何組が完成されたのでしょうか。恐らく、20組以上、30組以下、といったところなのではないでしょうか。
そんな中で、私にとっては、全6曲(或いは≪マンフレッド≫を含めると7曲)を通じてのバランスの良さが感じられる全集として、最も魅力的な存在がロストロポーヴィッチ&ロンドン・フィルによるものとなっています。
さて、ここでの第5番についてであります。
ゆったりとしたテンポを基調としながら、タップリと、そして、切々と奏で上げられている演奏となっています。最終楽章の序奏部など、その最たるものと言えましょう。
それだけに、思い入れたっぷりの濃密な演奏が繰り広げられている。とてもロマンティックな音楽となっています。そのうえで、誠にドラマティックでもある。至る所で、雄々しいまでの強奏を繰り出しながら、作品全体を鮮烈に描き上げてゆく。その様は、まさに、ストレートな感情の発露だと言えそう。
そのような演奏ぶりが、この作品の性格にピッタリと嵌っています。しかも、過度に騒々しさを感じさせるようなことはない。それは、常に作品に寄り添っている音楽が鳴り響いているが故だと言えましょう。そして、土臭さが感じられると言うよりも、洗練味を帯びた音楽となっている。
実に立派な、そして、頗る魅力的な演奏であります。
(チクルスの詳細は、添付写真を参照ください。)