カザドシュ&セルによるモーツァルトのピアノ協奏曲第17番を聴いて

カザドシュ&セル&クリーヴランド管によるモーツァルトのピアノ協奏曲第17番(1968年録音)を聴いてみました。

カザドシュも、セルも、更には、クリーヴランド管も、キリっと引き締まった音楽を奏で上げてくれています。その佇まいは誠に端正。純度の高い音楽となっています。そして、なんとも気品に満ちた音楽となっています。そのうえで、10番台の協奏曲の音楽世界に相応しい、可憐な演奏となっている。
全体的に、硬質な演奏が繰り広げられています。そして、無駄がなくて、結晶度の高い演奏となっている。
その一方で、躍動感や力感にも不足はない。音楽が存分に弾んでいて、かつ、必要十分な逞しさを備えてもいる。最後の部分での疾走感も充分で、聴いていてワクワクさせられる。
コクが深くて、しかも、軽妙な演奏。そんなふうに言えましょう。
そんなこんなのうえで、惚れ惚れするほどにチャーミングな音楽が鳴り響いている。純美な音楽でもあると言えそう。そのような演奏ぶりが、10番台であるからこそ一層映えてくるのだ、とも思える。そして、モーツァルトの音楽に不可欠な飛翔感に溢れている。なんとも瀟洒でもある。

聴いていて幸福感に包まれてくる、素敵な素敵な演奏であります。