キーシン&ジュリーニ&ウィーン・フィルによるシューマンのピアノ協奏曲を聴いて

キーシン&ジュリーニ&ウィーン・フィルによるシューマンのピアノ協奏曲(1992年・ライヴ録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
キーシンが21歳になる年にライヴ録音された、ここでの演奏。そのキーシンによる演奏はと言いますと、リリシズムに溢れたものとなっています。
と言いつつも、決して静的な演奏となっている訳ではありません。なるほど、深沈とした趣きを湛えた音楽が奏で上げられてはいますが、その裏側には、「静謐の中の情熱」と言
えそうなものを湛えている。それは、外に向かって放射される情熱というよりも、内面へと染み込んでゆくような情熱とでも言えそう。
キーシンは、この演奏から14年後に、コリン・デイヴィス&ロンドン響とも同曲を録音していますが、そこでも似たようなことの言える演奏を繰り広げている。この辺りはもう、キーシンの音楽面での志向なのでありましょう。とは言え、14年後の演奏と比べると、その情熱は、もう少しあからさまなものであるように思われます。コリン・デイヴィスと再録音したものでは、もっと抑制が効いていたようにも思われる。
しかも、ここでの演奏は、流麗で、滑らかな肌触りをしたものとなっています。そして、曲想に応じて、小気味良さを備えたものとなっている。屈託のなさや、伸びやかさが感じられもする。そんなこんなによって、必要十分に華麗な音楽が鳴り響くこととなっている。それがまた、この協奏曲が備えている性格に相応しい。
そのようなキーシンに対して、このとき78歳だったジュリーニは、風格の豊かな演奏ぶりで、ピアノ独奏をガッシリと支えてくれています。しかも、第2楽章での演奏ぶりに顕著であるように、慈しみに満ちている。コクの深い音楽を奏で上げてくれてもいる。
更には、ウィーン・フィルによる柔らかくてふくよかな響きが、この演奏をより一層魅力的なものにしてくれている。
若きキーシンとジュリーニ&ウィーン・フィルという組合せゆえの魅力が詰まっている、素敵なシューマンであります。






