ケルテス&バンベルク響によるハイドンの≪告別≫を聴いて

ケルテス&バンベルク響によるハイドンの≪告別≫(1960年録音)を聴いてみました。
1973年に、イスラエルのテル・アヴィヴの海岸で遊泳中に高波にさらわれ、43歳の若さで命を落としたケルテス。そのケルテスによるハイドンの作品の正規録音は、当盤以外には、同時期に同じくバンベルク響を指揮した交響曲第104番≪ロンドン≫と協奏交響曲の2曲が遺されているくらいでしょう。その点で、とても貴重な録音だと言えましょう。
さて、ここでの演奏はと言いますと、ケルテスらしい、堅実にして端正で、なおかつ、生命力豊かなものとなっています。更に言えば、はったりのない、実直な演奏が展開されている。
第1楽章は、とりたてて速いテンポが採られている訳ではないものの、躍動感たっぷり。それでいて、決して騒ぎ立てるようなことはしなくて、キリっと引き締まっている。短調で書かれているということもあって、切迫感があって、かつ、凝縮度の高い音楽が鳴り響いています。
第2楽章では、過剰に濃密にならない範囲でタップリと歌い込んでいて、鄙びていながらも、優美な音楽世界が広がることとなっています。ある種ののどかさが強調されていて、第1楽章での緊迫感に富んだ音楽とのコントラストも鮮やか。とは言いましても、決して手綱を緩めている訳ではなく、凛とした表情を湛えている。
鄙びた優美さという点では、メヌエット楽章である第3楽章での演奏ぶりの方が、より一層はっきり目立つものとなっています。それだけに、親しみやすさを湛えてもいる。
最終楽章に入ると、第1楽章での緊迫感や凝縮度の高さが戻ってくる。こちらでのテンポは、やや速めとなっているために、疾駆感を伴ったものとなってもいます。そして、毅然とした表情を湛えている。
その一方で、この楽章の後半部分、テンポをアダージョに落として以降では、優しさに溢れていて、典雅な音楽奏で上げられている。この箇所ならではの、奥床しさや、しっとしとした情感や、といったものが巧まずして表されています。
「純粋な音楽美」といったものを秘めていて、かつ、ハイドンならではの人懐っこさにも不足のない演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。
なんとも素敵なハイドン演奏であります。






