ハイフェッツ&ライナー&シカゴ響によるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を聴いて

ハイフェッツ&ライナー&シカゴ響によるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(1957年録音)を聴いてみました。
実に毅然とした演奏となっています。そして、音楽にベトつき感が全くない。まさに、快刀乱麻を断つ、といった演奏ぶり。そのようなこともあって、この曲に付き纏う「強烈な臭いを放つ音楽」(これは、ハンスリックによる評言でありますが)といった印象は皆無。
いわゆるザッハリッヒ(即物主義)な演奏だと言え、過度な感情表現を施さずに、バッサバッサと音楽は進められています。センチメンタリズムのかけらも見受けられない。
しかも、技巧のキレが抜群。それはもう、痛快だと言っても良いほどに。身体で風を切りながら、クールに、そしてパーフェクトに突き進んでゆく、といったような趣が感じられます。
なるほど、最近のヴァイオリニストであれば、このくらいの技巧を持っていることは当たり前かもしれません。しかしながら、そこに込められた気魄や緊迫感が、やはりハイフェッツならではのものだと言えそう。更に言えば、技巧が決して表面的なものとなっておらず、彫琢の深さに繋がっているように思える。そして、音楽全体が躍動していて、作品自身も嬉々としているかのようだと言いたい。
なおかつ、ライナーによるバックアップが、毅然としていて、強靭な音楽づくりが為されているところがまた、ハイフェッツの演奏ぶりにマッチしていて実に素晴らしい。
この演奏、とても世評の高いものとなっておりますが、そのことがよく理解できる、実に立派であり、驚異的なまでの完成度を示している快演。そんなふうに言いたくなる、なんとも見事な演奏であります。
(唯一の不満は、至るところでカットが施されている、というところでありましょうか。)





