クレンペラー&フィルハーモニア管によるシューベルトの交響曲第5番と≪未完成≫を聴いて

クレンペラー&フィルハーモニア管によるシューベルトの交響曲第5番と≪未完成≫(1963年録音)を聴いてみました。
悠然としていながらも、歩みが鈍重になったり、立ち込める空気が重苦しくなったり、といったようなことはなく、充分にしなやかな演奏が繰り広げられています。第5番に特徴的であるように、優美さに不足するようなこともない。更には、これは両曲に共通して言えることなのですが、大袈裟にならない範囲で気宇の壮大さを備えている。慈愛に満ちてもいる。そして、凛としている。
第5番では、腰の据わった演奏でありつつも、明るくて溌剌とした表情を見せてくれている。音楽が格調高く弾んでいるのであります。そして、この作品に相応しい典雅な雰囲気を湛えている。とは言いましても、決して「ヤワな」音楽になるようなことはない。背筋のピッと立った音楽が奏で上げられているのであります。しかも、短調で書かれている第3楽章の主部では、他の多くの指揮者による演奏以上に厳格な音楽が鳴り響いているところが、なんとも印象的。とりわけ、この第3楽章での演奏では、音楽の織り成す線が、明瞭に描かれてゆくこととなってもいる。
一方の≪未完成≫では、あまりデモーニッシュになり過ぎずに、クッキリとした抒情性を表出させてくれています。ゴツゴツとした肌触りをしたものではなく、滑らかさが感じられ、かつ、シューベルトならではの「歌心」を湛えている。それでいて、トゥッティで強奏する箇所などでは、凝縮度の高い音楽が鳴り響いている。決然としてもいる。また、第1楽章の展開部では、峻厳な音楽が奏で上げられてもいる。そんな展開部を経た後の再現部では、提示部での演奏以上に緊張感の強いものとなっているところに、クレンペラーが施すドラマツルギーの卓抜さを見る思いがする。
なんとも味わい深いシューベルト演奏。しかも、変にかしこまることなくシューベルトの音楽世界に身を浸すことのできる演奏。
そんなふうに言えそうな、素晴らしい演奏であります。





