マゼール&ベルリン・フィルによるツェムリンスキーの≪抒情交響曲≫を聴いて
マゼール&ベルリン・フィルによるツェムリンスキーの≪抒情交響曲≫(1981年録音)を聴いてみました。独唱は、ヴァラディ(S)と、フィッシャー=ディースカウ(Br)の夫妻が配されている。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
1970年代から80年代の前半辺りのマゼールの演奏は、キリっと引き締まったものが多かったように思えますが、ここでの演奏は、豊麗なものとなっています。それは、ベルリン・フィルを指揮していることに依るところが大きいのでありましょう。なおかつ、後期ロマン派の流れを汲む、壮大な曲想を持つこの作品の性格に合わせたものであるのでしょう。
そのような演奏を可能にしたのは、マゼールの知性ゆえであり、かつ、引き出しの多さゆえなのでありましょう。
総じて、とても豊饒な音楽が奏で上げられています。音楽が、そこここでうねっていて、ドラマティックに描かれている。更には、色彩鮮やかにして、妖艶でもある。そんなこんなによって、頗るロマンティックであり、濃厚な音楽世界が広がってゆく。とても精妙な音楽となってもいる。そして、表題通りに、抒情性豊かな音楽が鳴り響いている。
その一方で、過度に開放的にならずに、凝縮度の高さを感じさせてくれるところが、いかにもマゼールらしいところだと言えそう。
そのうえで、ベルリン・フィルならではの分厚くて、充実度タップリな音が鳴り響いているところが、この演奏をより一層魅力的なものにしてくれています。更に言えば、芳醇な味わいを湛えてもいる。
そのようなマゼール&ベルリン・フィルによる音楽づくりに加えて、ドラマティックなヴァラディと、F=ディースカウによる精妙にしてスケールの大きな歌いぶりとが、この作品の音楽世界に似つかわしいものになっていると言いたい。
ここに集まっている演奏家たちの美質がクッキリと刻まれていて、そのことによって、この交響曲の魅力をストレートに味わうことのできる演奏となっている。
なんとも素敵な演奏であります。