アシュケナージ&プレヴィン&ロンドン響によるプロコフィエフのピアノ協奏曲第4,5番の2曲を聴いて

アシュケナージ&プレヴィン&ロンドン響によるプロコフィエフのピアノ協奏曲全集から第4,5番の2曲(1974年録音)を聴いてみました。

プロコフィエフ(1891-1953)は、生涯に5つのピアノ協奏曲を制作していますが、第4番op.53を1931年に、第5番op.55を翌1932年に完成させています。
そのうち、第4番は、左手のための作品。ラヴェルの他、多くの作曲家が作品を捧げているように、第1次世界大戦で右手を失ったピアニスト、ヴィットゲンシュタインのために作曲されたピアノ協奏曲となります。左手のみで奏でられてゆく作品と言いつつも、ラヴェルによる協奏曲と同様に、とても片手で弾いているようには思えない多彩な色調を持っている作品になっています。

さて、この2曲での演奏はと言いますと、なんとも鋭敏なものだと言えましょう。それは、アシュケナージのピアノにも、プレヴィンの指揮にも当てはまる。
冴え冴えとした、雑味の無い演奏が繰り広げられています。スッキリとした佇まいをしている。更に言えば、冴え冴えとしていて、クールな演奏ぶりとなっています。そのうえで、とても色彩的。
プロコフィエフ的な野性味は薄いと言えそう。精妙で、洗練された音楽が鳴り響いています。それでいて、躍動感や逞しさは充分。じっくりと腰を据えて耳を傾けることができつつ、胸のすく思いを抱くことのできる演奏となっている。
しかも、テクニックに切れがある。とは言うものの、変にエキセントリックになるようなところは微塵もありません。技巧の確かさが、キリっとした佇まいを生んでいると言えそう。そして、ピュアな美しさを湛えることとなっている。
客観性の高い演奏。そんなふうにも言えるのではないでしょうか。

なんとも見事な、そして、独特の魅力を持っているプロコフィエフ演奏であります。