トスカニーニ&BBC響によるエルガーの≪エニグマ変奏曲≫を聴いて

トスカニーニ&BBC響によるエルガーの≪エニグマ変奏曲≫(1935年ライヴ)を聴いてみました。

トスカニーニらしい、毅然とした演奏となっています。力感に溢れていて、ドラマティック。スケールが大きくて、堂々としている。
その一方で、普段のトスカニーニほどには、沸騰するような熱さや、輝かしさや、疾走感といったようなものは、感じられません。それよりももっと、グッと腰を低く落として、どっしりと構えながら、風格豊かに演奏を奏で上げている。それだけに、とても端正な演奏となっている。キリッと引き締まっている。そのうえで、過度にならない範囲での劇性が与えられている。
それでいてやはり、逞しい生命力に溢れている。骨太な演奏が繰り広げられているとも言えそう。何と言いましょうか、品格の高さと、逞しさとが共存している演奏。
そんなこんなによって、エルガーならではのノビルメンテな(高貴で、上品で、気品のある様子)性格も、シッカリと感じられる演奏となっている。終曲などは、誠に壮麗でもある。

トスカニーニによる演奏を俯瞰するうえで興味深い演奏であるとともに、この作品の魅力を堪能することのできる、素敵な演奏となっています。