マルケヴィチ&ベルリン・フィルによるシューベルトの交響曲第4番≪悲劇的≫を聴いて
マルケヴィチ&ベルリン・フィルによるシューベルトの交響曲第4番≪悲劇的≫(1954年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
マルケヴィチらしい明晰な演奏であります。速めのテンポを基調としながらキビキビと音楽は進められていて、推進力に溢れたものとなっている。疾駆感に満ちてもいる。
そのうえで、適度な緊張感を備えていながら、ドラマティックな音楽が鳴り響いている。凝縮度が高くもある。そのような演奏ぶりが、短調作品のこの交響曲の音楽世界に相応しい。
それでいて、普段のマルケヴィチと比べると、ストイックであったり、極度なまでに直線的であったり、といった演奏にはなっていないように思えます。必要以上に鋭角的でもない。なるほど、まろやかと言うのとは違うのですが、多少なりの「おおらかさ」のようなものが感じられるのであります。とりわけ、緩徐楽章は、歌心に溢れていて、ふくよかな演奏となっている。それは、第3楽章のトリオ部についても然り。
それでもやはり、かなり立体的な演奏だと言えましょう。主情を削ぎ落として、客観性の高い音楽づくりとなってもいる。男気のようなものが感じられもする。更に言えば、ちょっぴりニヒルな雰囲気を備えてもいる。
そのうえで、冒頭に戻るのですが、とても明晰な演奏となっている。
ユニーク魅力を持っている、そして、大きな説得力を備えている演奏。そこには、マルケヴィチらしさが感じられもします。また、この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏となってもいる。
聴き応え十分な、なんとも素敵な演奏であります。