セル&クリーヴランド管によるハイドンの交響曲第93番と≪驚愕≫を聴いて
セル&クリーヴランド管によるハイドンの交響曲第93番と≪驚愕≫の2曲(1968,67年録音)を聴いてみました。
精緻で、端正で、格調高い演奏であります。ある種の厳粛さが漂っている。しかも、キリリと引き締まっていつつ、躍動感がって、弾力性が備わってもいる。
なによりも尊いこと、それは、セルによる大半の演奏に当てはまることだと思っているのですが、楽譜に記されている音たちが、こうあって欲しいと望んでいるであろう強弱、音価、スピード感、運動性、弾力性、推進力、重心の高さ、音の消え際の処理の的確さ、等々で表現し尽されているということ(と、私は確信しております)。
そのような音楽づくりは、ハイドンの端正な音楽において、殊のほか大きな意味合いを持ってくるように思えます。精確で規律正しい演奏ぶりによって、音楽が示す佇まいは誠に美しく、まさに「古典美」に満ちた音楽が響き渡ることとなっているために。
しかも、セルが奏でてゆく音楽は、決して四角四面なものなどではなく、生気に溢れている。そう、キビキビとした運動性に溢れてもいるのです。例えば、≪驚愕≫の最終楽章では、誠に敏捷性の高い演奏が繰り広げられている。
堅固で厳格で峻厳で、凛としていて、巧緻で、それでいて、生き生きとしていて、親しみ深さもある演奏。そして、充実感いっぱいな演奏。
ヨッフムによる演奏と、コリン・デイヴィスによる演奏とが、私にとってのハイドンの交響曲演奏の規範となっているのですが、この演奏は、ハイドンの音楽というものを超越した、普遍的な美が宿っているように思える。
「あ~、素晴らしい音楽を聴くことができた!!」という感慨を噛みしめることのできる演奏。これはもう、惚れ惚れするほどに、見事で、純度の高い、魅力的な演奏であります。