ケンペ&バンベルク響によるビゼーの≪アルルの女≫第1,2組曲を聴いて

ケンペ&バンベルク響によるビゼーの≪アルルの女≫第1,2組曲(1963年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ドイツの指揮者とオケによる≪アルルの女≫。ちょっと変わった取合せのようにも思えますが、これが、実に魅力的な演奏なのであります。
更に言えば、ここで聴くことのできる音楽は、フランス物ですとか、ドイツ物ですとか、といった分類に捉われない、「普遍的な美」が詰まっているもの。そんなふうにも言えるように思われます。
真摯な演奏態度が貫かれている音楽となっています。その結果、生まれている音楽は結晶度が極めて高い。キリッと引き締まっている。とても瀟洒でもある。
それでいて、決して大人しい音楽になっていたり、穏当な音楽になっていたり、といった訳ではなく、充分に逞しいものとなっています。過度にならない範囲でドラマティックでもある。そして、第2組曲の「パストラール」などで顕著なように、抉りの深い音楽が奏で上げられてもいる。また、最終曲の「ファランドール」では、明瞭な輪郭線で描き出されていて、かつ、生彩感に満ちた演奏が繰り広げられている。
そんなこんなのうえで、この作品に相応しい「人懐っこさ」や「親しみやすさ」に溢れてもいる。それも、決して通俗的なものではなく、気品に溢れたものとして。更には、人間味に溢れた暖かさを湛えたものとして。

なんとも素晴らしい、そして、特別な魅力を備えている演奏。しかも、変に肩が凝るようなことがなく、この作品の音楽世界にス~っと入り込むことのできると演奏となっている。
ケンペの音楽性の(更に言えば、人間性の)豊かさを痛感することのできる、素晴らしい演奏であります。