ハスキル&シューリヒト&シュトゥットガルト放送響によるモーツァルトのピアノ協奏曲第19番を聴いて

ハスキル&シューリヒト&シュトゥットガルト放送響によるモーツァルトのピアノ協奏曲第19番(1956年ライヴ)を聴いてみました。
モーツァルトの生誕200年にあたる年の夏に開かれた演奏会をライヴ録音したもの。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ハスキルによるピアノは、清潔感に溢れていて、かつ、軽妙で、活き活きとしている。その表情は、モーツァルトが描き上げてくれた10番台のピアノ協奏曲が備えているチャーミングな性格に、とても似つかわしい。
やや速めのテンポで、音楽は淀みなく流れてゆく。屈託がなくて、晴朗で、快活な音楽世界が広がっています。音楽が、そこここで弾け飛んでいる。
逡巡して立ち止まるような気配は、どこにも窺えません。むしろ、曲想に応じては、雪崩を打つようにしてザーッと前へ突き進んでゆく(第1楽章のカデンツァが終わった後の箇所などで、その傾向が強い)。その様がまた、実にキュートなのであります。更には、緩徐楽章においても、キビキビと音楽は進められていて、粘るようなことはない。それはそれは、晴れやかで、清々しい音楽が奏で上げられている。
しかも、ハスキルが紡ぎ上げるピアノの音の、なんと美しいことでしょう。粒立ちがクッキリとしていて響きが透き通っていて、それでいて、まろやか。そのような音によって弾かれていることによって、音楽がより一層、純真なものとなっているように思えます。
そのようなハスキルに対して、シューリヒトがまた、軽妙にして、屈託のない音楽づくりを施してくれています。そのサポートぶりは、ここでのハスキルの演奏に誠に相応しい。

そんなこんなによって、聴いていて、魂が飛翔するような愉悦感を味わうことのできる演奏となっている。
いやはや、途轍もなく魅力的な演奏であります。