ポリーニ&アバド&シカゴ響によるバルトークのピアノ協奏曲第1,2番を聴いて

ポリーニ&アバド&シカゴ響によるバルトークのピアノ協奏曲第1,2番(1977年録音)を聴いてみました。

研ぎ澄まされた感性に裏打ちさながらの、痛快なまでに鮮烈な演奏が展開されています。しかも、誠に精妙でもある。生彩に富んでもいる。
全編を通じて、実にシャープな音楽が奏で上げられています。そして、硬質にして、強靭な音楽が鳴り響いている。しかも、立体感がある。そういった特徴は、ピアノにも、指揮者にも、オーケストラにも当てはまる。そのうえで、色彩が鮮やか。音楽全体が冴え渡っている。
パワフルにしてエネルギッシュ、そして、ドラマティック。苛烈なまでの激しさを備えています。音楽が、至る所で蠢き動いている。そのような様は、なんとも衝撃的。まさに、胸のすく快演だと言えましょう。切れば血が噴き出すかのような、生々しさや逞しい生命力が感じられもします。
そのうえで、全ての音が鋭角的に「立って」いると言いたい。であるからこそ、作品を奥深くまでえぐっていく演奏が目の前で繰り広げられてゆく様を、まざまざと見せつけられる、という思いを抱くことになる。
更に言えば、この演奏では、曖昧な音楽表現など、どこにも見当たりません。何もかもが明快を極めている。そして、完璧。このような姿を眺めていますと、畏敬の念すら覚えてしまいます。
音楽に「パーフェクト」などというものはあり得ないと思うのですが、少なくとも仕上がりという点においては、パーフェクトな形で再現されたバルトークのピアノ協奏曲の姿が、ここに見て取れるように、私には思えます。
なるほど、バルトークの作品に特有の「土俗性」のようなものは削ぎ落とされていると言えるかもしれません。バーバリズムも薄い。とても洗練された演奏となっているのであります。しかしながら、そのようなことを突き抜けたところでの透徹された音楽美を、ここに見出すことができる。

これはもう脱帽するしかない、呆れるほどに見事な演奏であります。