アラベラ=美歩・シュタインバッハー&ルイージ&ウィーン響によるブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて

アラベラ=美歩・シュタインバッハー&ルイージ&ウィーン響によるブラームスのヴァイオリン協奏曲(2007年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

シュタインバッハーは、1981年にミュンヘンでドイツ人の父親と日本人の母親の間に生まれています。3歳でヴァイオリンを始め、9歳でミュンヘン音楽大学に学び、その後はドロシー・ディレイやギトリスにも師事し、19歳でハノーファーにて開催されたヨーゼフ・ヨアヒム・ヴァイオリン・コンクールに入賞した経歴を持っているようです。かように、ドイツで中心にキャリアを重ねてきた、今年42歳になる中堅のヴァイオリニスト。

ここでのブラームスは、彼女が26歳のときの演奏。
安定感があって、しなやかで、かつ、艶やかな演奏が繰り広げられています。そのうえで、清冽で、繊細でありつつ、必要十分に熱くもある。
そして、とても美しい。それは、音色においても、音楽の佇まいにおいても。
そのような演奏ぶりは、2019年の3月にルイージ&デンマーク国立響による福岡公演で、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番の実演を聴いたときの印象と重なります。そのときのブルッフについて、私は下記のように綴っています。

テクニックは抜群。どのようなパッセージも、全く無理なく弾きこなしてゆくのであります。音楽に崩れが生じない。音程も正確。
基本的に太い音をしているのですが、艶やかで華やいだ音色を響かせてもくれる。そして、その音色は惚れ惚れするほどに美しい。しかも、音色の変化に富んでいて、ニュアンスが細やか。表現も、必要に応じて、淡さや繊細さを持たせたり、濃厚な音楽づくりを示したりと、非常に幅が広い。
その上で、ロマン派の作品に不可欠とも言える、熱いパッションの迸りがある。
それはもう、胸がすくほどに見事なヴァイオリンでありました。

この音盤でのブラームスの協奏曲もまた、幹のシッカリとした音楽づくりをベースにしながら、ニュアンス豊かな音楽を奏でてくれています。基本的には堅固で端正な演奏でありつつも、充分に激情的。そう、随所に情熱の迸りが感じられながらも、音楽のフォルムが崩れるようなことは全くない。そして、響きが頗る美しい。テクニックも万全。
ルイージによるサポートもまた、素晴らしい。スッキリとした音楽づくりでありつつ、適度に重厚で、充実感いっぱいな演奏を繰り広げてくれています。

来月、尾高忠明さん&大阪フィルによるオール・メンデルスゾーン・プロの演奏会を聴きに行くことにしているのですが、そこでは、シュタインバッハーによるヴァイオリン協奏曲が組まれています。
きっと、素晴らしいメンデルスゾーンになることでしょう。今から、楽しみであります。