アンチェル&チェコ・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第1番を聴いて

アンチェル&チェコ・フィルによるショスタコーヴィチの交響曲第1番(1964年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

逞しい生命力に満ちた演奏となっています。筆致が骨太であり、雄渾な演奏ぶりが示されている。しかも、きっぱりと音楽を鳴らしながら、毅然とした演奏にもなっている。もっと言えば、媚びを売るようなところが微塵も感じられない。
こういったことは、アンチェルによる多くの演奏から見出すことができるのですが、この演奏では、そのありさまが際立っているように思えてなりません。
速めのテンポを基調とした、過剰に感情移入を施すようなことのない、客観的な演奏が繰り広げられている。それ故に、純音楽的な佇まいが示されている演奏だとも言えましょう。しかも、頗る真摯な演奏態度で。そのことによって、ある種、逆説的だとも言えるのでしょうが、ショスタコーヴィチが描こうとしたシニカルにしてシリアスな音楽世界がより一層、写実的に描き出されているように思われます。それは、冷酷なまでに描き出だされているとも言えそう。そして、真実味を帯びたものとして響き渡ることとなっている。
そのうえで、頗る力強い演奏となっている。推進力に満ちてもいる。その一方で、感情楽章では、抒情的な雰囲気を存分に湛えていながらも、感傷的にして、切実な音楽が奏で上げられている。

聴き手をグイグイと引っ張ってゆく力の大きな、見事な、そして、魅力的な演奏。透徹した音楽が鳴り響いているとも言いたい。
アンチェルの美質が鮮やかなまでに表されている、聴き応え十分な、素晴らしい演奏であります。