ベイヌム&コンセルトヘボウ管によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫を聴いて

ベイヌム&コンセルトヘボウ管によるメンデルスゾーンの≪イタリア≫(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

逞しい生命力を備えていて、かつ、颯爽とした音楽が奏で上げられています。概して速めのテンポが採られていて、キビキビと進められてゆく。
1950年代と言えば、ロマンティシズムを強調した濃厚な演奏が主流を占めていた、と言えるのではないでしょうか。例えば、ベイヌムの直前にコンセルトヘボウ管の音楽監督を務めていたメンゲルベルクに代表されるように。しかしながら、ベイヌムの演奏は、情に流されるようなことはなく、客観性に満ちているように思えます。そのために、誠に端正な佇まいをしている。
と言いつつも、無機質な音楽になっているようなことはありません。直線的なようでいて、しなやかで膨らみを持っている。そして、実に逞しい。しかも、凛としていながら、馥郁とした薫りのようなものが滲み出てもいる。
このメンデルスゾーンもまた然り。キリッとしていて、情趣深くもある。決して媚びを売るような素振りを見せずに、超然としている。それでいて、暖かみや親しみを湛えている。そして、メンデルスゾーンの音楽に相応しい、優美さや可憐さを備えている。
そのうえで、力感も十分。充実感タップリな演奏が繰り広げられてもいます。それは、響きの面においても、音楽が示している佇まいにおいても、当てはまる。
更に加えれば、コンセルトヘボウ管の芳醇な響きがまた、なんとも魅力的でもあります。

ベイヌム&コンセルトヘボウ管の魅力がギッシリと詰まっている演奏。そんなふうに言えましょう。
いやはや、なんとも見事な、そして素敵な演奏であります。