インキネン&日本フィルによるシベリウスの交響曲第4番を聴いて
インキネン&日本フィルによるシベリウスの交響曲全集から第4番(2013年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
1980年にフィンランドに生まれたインキネンは、2008年に日本フィルを初めて指揮し、2016年から2023年まで首席指揮者を務めています。すなわち、この演奏は、日本フィルのシェフに就く3年前に録音されてものとなります、
さて、ここでの演奏はと言いますと、息遣いが自然で、かつ、身のこなしのしなやかなものとなっています。そのような演奏ぶりによって、この作品の音楽世界が率直な形で描き上げられている。
シベリウスの音楽は、寒々としていて、荒涼な世界が広がってゆくようである、といった類の形容を、しばしば見るように思えます。しかしながら、私は、シベリウスの音楽は、決してただ単に寒々としたものではなく、むしろ、内側に熱狂を秘めたものが多いと捉えています。そこへゆくと、この交響曲第4番は、シベリウスが完成させた7つの交響曲の中では、最も寒々しくて、寂寥とした音楽世界の広がる作品になっているように思える。
先ほど、「この作品の音楽世界が率直な形で描き上げられている」と書きましたのは、この演奏からは、とめどないほどの荒涼感といったものがストレートに伝わってくるからであります。
しかも、音楽がシッカリと大地に根を張ったものとなっている。作品の内側から、逞しい生命力が沸々と湧き出してくる、そんな演奏になっています。寂寞としていながらも、音楽における熱狂が、シッカリと備わったものとなっている。
そのような演奏を可能したのも、インキネンの音楽性の豊かさと、自国の偉大な作曲家であるシベリウスへの敬愛の深さなのでありましょう。
(ちなみに、インキネンは、2023年にバイロイト音楽祭で≪ニーベルングの指環≫全4作を指揮しています。)
インキネンが33歳だったときの記録となる、ここでのシベリウス。なるほど、若手演奏家の特権とも言えそうな瑞々しさを備えたものでありつつ、とても堂に入った演奏が繰り広げられています。
なんとも素晴らしいシベリウス演奏であります。