マゼール&クリーヴランド管によるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫を聴いて
マゼール&クリーヴランド管によるR・シュトラウスの≪英雄の生涯≫(1977年録音)を聴いてみました。
キリッと引き締まったR・シュトラウス演奏となっています。
一般的にR・シュトラウスの作品群に対して抱く、豊麗で煌びやかな印象とは懸け離れた音楽世界が広がっていると言えましょう。シェイプアップされたR・シュトラウスが鳴り響いています。煽情的になるようなこともない。
しかしながら、充分に華麗であり、絢爛たる演奏となっています。決してケバケバしい音楽になることなく、水晶のような透明感を持った輝きを放つR・シュトラウス演奏だと言えそう。
更に言えば、耽美的な雰囲気を持った音楽ではなく、ある種、健康美のようなものが感じられる音楽だとも思える。没我の世界に入り込まずに、理知的に紡ぎ上げられている演奏であるとも。
このような印象を抱くのも、クリーヴランド管の特性があってのことなのではないでしょうか。と言いましょうか、クリーヴランド管を手兵にしたが故に、マゼールはこのような方向でアプローチをしたのではないか、と思えてくる。しかも、そのようなアプローチを、作品がしっかりと受け入れているところが、素晴らしい。
そのようなこともあって、とても個性的でありつつ、かつ、魅力的な演奏が繰り広げられている。しかも、ピュアな美しさを湛えた音楽が鳴り響いている。
このようなR・シュトラウス演奏も、なかなかに素敵であります。