シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンによるマーラーの≪大地の歌≫を聴いて

シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるマーラーの≪大地の歌≫(1996年録音)を聴いてみました。
独唱は、フェルミリオン(アルト)とルイス(テノール)。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

シノーポリは、1985年から1993年にかけてフィルハーモニア管とマーラーの交響曲全集を制作していますが、そこには≪大地の歌≫は含まれていませんでした。当盤は、それを補完する形となっています。
なお、1992年にSKDの常任指揮者になったシノーポリは、2001年に心筋梗塞で急逝するまでその任にありましたが、SKDとのマーラーのセッション録音は、当盤のみとなりました。
ちなみに、SKDというオケにとっても、現在のところ≪大地の歌≫の正規録音は当盤のみだと思われます。

さて、ここでの≪大地の歌≫はと言いますと、シノーポリの精巧でありつつも情熱的な音楽づくりと、SKDの清冽な響きとが融合された、実に魅力的な演奏となっています。
このコンビによる演奏としては、かなり激情的。血が滾るように情熱的で、音楽がうねりにうねりながら奔走してゆくかのよう。充分にドラマティックでもある。
しかしながら、SKDの響きが、そこに気品を添えてくれている。音楽をキリッと引き締めてくれてもいる。音楽がドロドロとしたものにならずに、清らかさがもたらされている。それがまた、私にとっては大いに惹かれるところであります。
2人の独唱者もまた、晴朗で、かつ、清澄な歌を披露してくれている。

シノーポリ&SKDの魅力が存分に詰まっている演奏。そして、聴き応え十分であり、興奮を喚び起こしてくれつつも、凛とした空気を纏っている演奏になってもいる。
格別な魅力を備えている、素敵な演奏であります。