マルティノン&フランス国立放送管によるビゼーの交響曲を聴いて
マルティノン&フランス国立放送管によるビゼーの交響曲(1971年録音)を聴いてみました。
なんと溌溂としていて、明朗で、かつ、抒情性に富んだ音楽なのでありましょう。それは、作品にも、演奏にも当てはまる。しかも、ここでの演奏は、変にこねくり回すようなことのない、自然体が貫かれたものになっていると言いたい。
陽光が差し込むような明るさを持っていて、精彩に富んだ音楽が奏で上げられています。なにもかもが鮮やかで、爽やかで、胸が弾むようなワクワク感があり、輝かしくもある。しかも、詩情性が豊か。
そして、実にオシャレ。可憐でもある。エレガントな雰囲気に包まれてもいる。それがまた、この作品に相応しい。
マルティノンの誠実さゆえなのでありましょう、ここでの演奏は、少しばかり几帳面な音楽づくりとなっていると言うべきかもしれません。しかしながら、覇気が漲っていて、充分に颯爽としたものとなっている。音楽全体が、生命力に溢れてもいる。そういった性格が、大はしゃぎすることなく、節度を持って示されてゆく。そのことがまた、この演奏を魅力的なものにしてくれていると言いたい。
その一方で、第2楽章では、愁いに満ちている、切々たる歌を聴くことができる。とは言いましても、必要以上に深刻ぶっていないところが、なんとも好ましい。
そんなこんなによって、聴く者を幸福感で包み込んでくれるような音楽が鳴り響くこととなっています。
ビゼーの手に依るチャーミングなこの交響曲の魅力を心行くまで味わうことのできる、立派で、センス満点な、なんとも素敵な演奏であります。