ギーレン&南西ドイツ放送響によるブラームスの交響曲第3番を聴いて
ギーレン&南西ドイツ放送響によるブラームスの交響曲第3番(1993年 セッション録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
ギーレンならではの、克明な筆致による明晰な演奏が繰り広げられています。目鼻立ちがクッキリとしてもいる。とは言いながらも、他の多くのギーレンによる演奏ほどには、エッジの立っている演奏にはなっていないように思える。
やや速めのテンポで、テキパキと進められてゆく。そのようなこともあって、キリっと引き締まっていて、端正な表情をした演奏となっています。そして、あまり主情を挟まない、スッキリと纏められた演奏が展開されてゆく。曖昧さのない演奏だとも言えそう。
それでいて、ふくよかで、しなやか。第2楽章において顕著であるように、歌心も十分であります。全編を通じて、抒情味や、ブラームスならではのロマンティシズムにも不足は感じられない。更には、第3楽章などでは儚さが漂ってもいる。その一方で、最終楽章の前半部分などでは、一気呵成に押し進めてゆくようなダイナミズムが感じられもする。
かように、多彩な表情を湛えた演奏となっていますが、ベースとなっているのはやはり、ギーレン独自の明晰な音楽づくりであると言えましょう。そんなこんなによって、知情のバランスに優れた演奏になっていると言いたい。それがまた、ブラームスによる4曲の交響曲の中で最もアポロン的な性格を持っていると言えそう第3番に相応しいと思えます。
ギーレンのちょっと意外な一面を垣間見ることができるところも含めて、なんとも素敵なブラームス演奏であります。