プレヴィン&ウィーン・フィルによる≪展覧会の絵≫を聴いて
プレヴィン&ウィーン・フィルによるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1985年録音)を聴いてみました。
プレヴィンとウィーン・フィルは、後年、テラーク・レーベルにR・シュトラウスの一連の管弦楽作品を録音するなど、相性の良さを存分に感じさせてくれるコンビとなりましたが、この≪展覧会の絵≫は、EMIへのR・シュトラウス作品(≪ティル≫≪ドン・ファン≫≪死と変容≫の3作)、フィリップスへのR=コルサコフの≪シェエラザード≫に続いての正規録音盤だったと記憶しています。発売された当初は、清新な印象を受けたものでした。また、これがウィーン・フィルにとっては初めての≪展覧会の絵≫の正規録音盤でもあり、大いに話題になったものでした。
(その後、ウィーン・フィルは、ゲルギエフ、ドゥダメルとも、同曲を正規録音しています。)
さて、この演奏を聴いて感じ取れたことについて。
この演奏においても、ウィーン・フィルの美音の魅力は絶大であります。編曲者のラヴェルの色合いの強い、ある種、豪華絢爛、派手派手系の管弦楽曲だと言えそうですが、ウィーン•フィルの艶やかでしっとりとした美音が添えられていることによって、実に格調の高い演奏となっている。それはまた、プレヴィンの音楽性ゆえなのでありましょう。
そう、ここには、こけおどしな音楽とは最も懸け離れた、純粋なる音楽が屹立していると思うのであります。しかも、とっても「語り上手」な音楽が。それはまさに、プレヴィンによる功績だと言えそう。誠実な音楽づくりでありながら、演出効果もバッチリ。「キエフの大門」などは、誠に壮麗でもある。
しかしながら、私にはこの演奏の主役はウィーン•フィルのように思えてなりません。気品があって、芳醇で、限りなく美しいオーケストラの響きが敷き詰められている≪展覧会の絵≫。それはもう、ふくよかで、しなやかで、まばゆいばかりの光沢があって。柔らかみを備えていて、典雅で、そのうえ艶っぽさに満ちている演奏となっている。
ここには、オーケストラ作品を聴く醍醐味がある。ウィーン・フィルという、極上のオーケストラによる管弦楽作品を聴く歓びが。
いやはや、実に魅惑的な演奏であります。