ケーゲル&ライプツィヒ放送響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫を聴いて
ケーゲル&ライプツィヒ放送響によるムソルグスキーの≪展覧会の絵≫(1959年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
東ドイツで活躍していたケーゲル(1920-1990)は、地味な存在の指揮者だと言えるのではないでしょうか。そして、東西ドイツの統一がなされた直後、これから先の自分の演奏活動に悲観してピストル自殺を図り、この世を去ったということもあって、非業の指揮者というイメージが強いように思われます。
そのようなケーゲルが、まだ20代だった時期に録音したここでの演奏は、とても逞しいものになっています。と言うよりも、凄みのある演奏だという表現のほうが相応しいように思える。
音楽は、地響きを立てながら進んでゆくかのよう。全体的にテンポはやや速めで、推進力と力感に富んでいますが、重心は低めで、どっしりと構えた重量級の音楽づくりがなされています。それはまるで、重戦車が行くかのような音楽になっている。
そのうえで、エネルギッシュにして、ドラマティックな演奏が展開されている。壮麗さにも不足はなく、とりわけ、「ババ・ヤーガ」から「キエフの大門」にかけては頗る壮大な音楽が奏で上げられています。その一方で、「卵の殻をつけた雛の踊り」などでは、敏捷性が高くて、躍動感溢れる演奏が繰り広げられている。また、「ビドロ」や「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」などでは、悲哀に満ちた音楽が鳴り響いている。
しかも、外面を狙ったようなところは微塵も感じられずに、切迫感が強く、毅然としていて、かつ、誠実味に溢れている。全編を通して、とてもシリアス音楽となってもいる。
なんとも充実度の高い演奏。そして、ズシリとした手応えを持っている演奏。
あまり話題に上ることのない音盤だと思えますが、多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素晴らしい演奏であります。